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Chupon Taidan (30)

篠田ちひろ(しのだちひろ) 

山口県出身。2008年よりカンボジア移住。タイのハーブ専門学校で学び、2009年クル・クメールボタニカル社設立。2015年にスパ・クメール開業。
スパクメール:011-345039

 

Chupon Taidan (35)

鈴木里沙(すずきりさ) 

東京都出身。日本アロマテラピー環境協会アドバイザー、インストラクター、セラピスト課程修了。2012年12月よりホテル内スパ事業の立ち上げのため、カンボジア移住。サマティスパ、何でも屋Hub SiemReap経営。クメールハーブ伝統療法に基づいた心と身体のヘルスケアを提案している。サマティスパ:089-526008

 

 

 

チュポンとは?

篠田 クメール伝統医療として古くから伝えられているハーバルスチームサウナです。通常、カンボジアでは産後女性が体力回復のためにやっていて、スチームで体を温めリラックスさせることで血行が良くなり、新陳代謝を促進し、お腹が空き、食べることで肌につやと張りを与えていきます。デトックス効果が高く、病気への免疫力UPもあると言われます。

鈴木 そうですね。もともとクメール伝統医療専門家であるクルクメールのもと、薬草を治療に活用する伝統的な医療が行われてきたようです。それら療法の一つとして現在も受け継がれているのが薬草サウナの習慣です。カンボジアで育った豊かな薬草やスパイスを蒸したスチームを浴びるんですが、フレッシュな香りと45度程度の暑すぎないスチームということもあり、サウナが苦手な人も入れます。じわっと内側から出てくる大量の汗で心も身体もデトックスしていくのを体感できるのが特徴ですね。
以前、カンボジア女性に何でチュポンに入るのか聞いてみたら、「若くいれるから」と言ってました。昔からハーブを使って健康と美容に役立てていたんですよね。あと、チュポンに入ることが多いのは気温の変化により体調が悪い時、生理中、出産後。婦人疾患や初期の風邪の治療に広く用いられているんですよね。一日に多い人で2~3回くらい、長い人で毎日2カ月くらい続けたりすることもあって、とりあえず体を温める。

篠田 実はチュポンはカンボジアだけではないんですよね。同様のものがラオス、インド、スリランカなどアジア全域にあります。有名なものだと韓国のヨモギ蒸しもそうですね。もともと東南アジアの伝統医療はヒンドゥー教が広がった時代、インドのアユルヴェーダと中国の漢方の考え方が融合したものが多いんですが、このチュポンはアユルヴェーダの流れですね。日本の東洋医学も含め、どこか通じるところがあって、それぞれの風土に合わせて独自に発展してきたんですよね。

クルクメールとは?

鈴木 クルクメールとは、千年以上前からカンボジアの人々の健康を守り続けている医師のような存在です。彼らの治療法は、カンボジアに自生する八百種類以上に及ぶハーブを使い治療する伝統医療師として近代においても、数は少ないですが実際に治療を行っています。クルクメール達の中には、クルバーアチャー、クルオームアーム、クルビエイレイアタ、クルメイモアットと呼ばれる霊媒師や占い師、呪術師を兼ねている人たちもいてカンボジアの伝統医療は薬草の使用と並行して精神的要素も色濃く、クルクメールは長く続けられてきた村社会において、心と体のトータル的な支えとなり村の人々の健康を守ってきたようです。ちなみにあんまり知られていないんですが、クルクメールにも2タイプあり、外科担当がクルチョオーで、内科担当がクルクメールとなります。面白いですね。
そして、彼らの多くが親、師匠から学んでいます。紙に残さない口承医療なので、ほとんどの場合が、血縁関係にある人が知識を受け継いでいますが、後継者問題も切実みたいですね。

篠田 口承伝承ということは、自分が持ってる知識を他の人に分け与えることですよね。知識イコール財産でもあるんで、それを人に教えるということは、自分のお客さんを新しい人にとられるんじゃないかというのもあるんです。だから持っている知識を100%伝えないことが多く、だんだん知識が失われているんじゃないかと思っています。

チュポンにはどのような効果がありますか?

篠田 多くの効果がありますが、一言でいうと「美白」ですね。

鈴木 ハーブそれぞれを調べて、個々の効用を見ると、その効果は毒素排出、美肌、アンチエイジング、美白、疲労回復、心身強壮などです。チュポンはハーバルサウナですから、ハーブの効果が皮膚から皮下へ入り、口や鼻から吸い込んだ蒸気の成分が肺から血管を通って体中に流れ、体の隅々までしみわたっていきます。例えば、女性にとって大事な子宮は毛細血管の集まりなんです。温めることが重要で、暑いからって肌をさらすと冷えに繋がるから、その点はカンボジア人もみんな気を使っている。子宮が元気できちんと機能していれば、美肌などにも繋がるんです。

篠田 東洋医学って予防医学と言われますよね。これもバランスを整えることが大事で。そのためにスチームで体を温めて、ハーブでより効果を得る。そうやって弱ったり疲れた体をケアしているんですよね。

鈴木 ですよね。カンボジアではそういう風に女性メインで利用してきたんですが、実際はもっといろいろ作用があると感じていて、具体的にいうと免疫促進や、健胃作用・整腸作用・肝機能強化などにすごく効果があるんです。
試しに普通のローカル市場で売っているチュポン用パッケージを調べてみたときに20種類以上のハーブが入っていて、それぞれの効用を見てみても、女性のためだけじゃなくて、男性にも効果がある物も入っていることが多いんですよね。例えば加齢臭抑制効果なんかもあるんですよ。精神的にもいい。イライラしている人や悩みがあったり、ストレスがある人にもリフレッシュ効果がある。

篠田 チュポンで、汗かいてスッキリ、みたいに。

鈴木 はい。普通の汗よりも、もっとすっきりみたいに。

Chupon Taidan (16)

いつ、どうしてこれを始めようと思ったんですか?

篠田 カンボジアに来た2008年頃、友人が赤ちゃんを産んだ後に、チュポンをやっていて、自分も体験させてもらったんですが、なんかすごく気持ち良さを感じたんです。その時に、このチュポンを日本の人たちにも紹介したい、これを仕事にしたいなと思ったんです。でも実際日本でやるには準備とか考えるとものすごく大変なんですよね。じゃあ、チュポンをできる施設がなければ、疑似体験できるものをと考えて、お風呂場で手軽に体験できるようにバスソルト、バスティーが最初に商品化した入浴剤だったんです。これが起点となったんです。
その頃から、本物のチュポンを体験できる施設を作りたいとは考えていたんです。今回、スパをオープンすることになって、やっと夢がかなった感じです。

鈴木 私の場合、初めてカンボジアに来た時に働いたホテルにチュポンがあったんです。そこでチュポンを初めて知りました。ハーブが好きなので、カンボジアのハーブを使って何かできないかと考えていたんです。そこで実際にチュポンを体験してクメール人の知恵、クメール人の美容法や健康法を体感し、この感動をみんなに知ってもらいたいと思って、それでいつか自分でやってみようと。

立ち上げにあたり、どのような問題がありましたか?

篠田 いやー、怪しすぎる木がありすぎてどうしようかと思いました。普通に英語名がないような木。よく分からないハーブは使えないですしね。なので、現在自社のチュポンで使用しているのはオーソドックスなものを選ぶようにしています。本当にクルクメールが使っていて普通では手に入らないような木はクルクメールから直接購入し、他のハーブなどは市場で仕入れています。
実際、市場に行けば普通のザルに山盛りになっていっぱい売っていたりします。あと生チュポンセットと乾燥チュポンセットとかはパックになって売ってたり…。でも以前乾燥チュポンを袋で買ったら、見たこともないような小さな黒い虫がワサワサと出てきてギャーって投げ捨てたこともあります。

鈴木 やっぱり悩んだところは同じですね。私も調べ始めた当初、学名が分からない植物が多かったんです。日本人に効能を説明するためには根拠が必要なので、そこを調べていくのが大変でした。
私のチュポンは市場で仕入れたものをベースとして、フレッシュハーブと私のお薦めする3種類のハーブをミックスして、お客様に体験してもらってます。

どのような人にお勧めしたいですか?

篠田 老若男女、みんなに体験してほしいです。チュポンは女性のやるものみたいなイメージあるかもしれないんですが、男性もサウナ好きな方多いですよね。それと一緒でチュポンだから特別なものじゃなくて、同じ感覚で入っていただいたらいいと思います。

鈴木 私は特に女性系の悩みのある人や、アンチエイジングや美肌に興味のある方、心身の強壮作用もあるので日本で強いストレスを感じてる方に来てほしいです。また疲労回復作用があるので遺跡観光で疲れた体を癒したい人にもちょうどいいと思います。

お客様からの反応は?

篠田 すごく汗が出て気持ち良かったっていうのが多いですね。

鈴木 いろいろあるんですが、「腰痛が治った」「むくみがとれた」「冷えが解消された」「痩せた(2週間で5回以上通ってくださる方からの意見)」「生理日が伸びた」など。先日、慢性的に子宮が痛いという方から連絡があって、それが治ったからありがとうと日本からわざわざ連絡が来たことがありました。

篠田 あ、確かに。カンボジア人でクルクメール(医師)に行く人で多いのが生理不順なんですよね。体のバランスが崩れている、冷えてるとか、体質的な問題ですよね。継続的にやることで体質改善効果があるみたいですね。

今後の展開は、どう考えていますか?

鈴木 せっかくチュポンの認知度が上がってきているので、チュポン協会みたいなものを作り、幅広くチュポンを薦めていきたいです。協会とすることで、適度なクオリティを義務付け、特に伝統的な方法をきちんと受け継ぎ正しく復興させるという意義のもと始めたいと思います。そこから広がって今後、チュポンをやる店がもっと増えればいいと思います。カンボジアのハーブを使ったこうした代替療法や美容法を世界に発信していきたいです。

篠田 いいですね。まさにうちの目的の一つがこれですね。正しく復興し、次の世代に。将来的にシェムリアップに行ったなら、チュポンをやらなきゃ損みたいになればいいですよね。そうなるまで頑張っていきましょう。

鈴木 やりましょう。