カンボジア 文化

消失寸前の文化、そして復興

現在のベトナム南部にあたるコーチシナ地域では、紀元前よりインドとの貿易が盛んであり、中国、インドの海上の中継地として栄えていた。インドの影響をより受けてできた国家「扶南」はタイ南部、カンボジア、ベトナム南部辺りに位置する。扶南はカンボジア独自の文化を発展させる。アンコール時代には、近隣国へも文化的影響を多く及ぼしていた。ヒンドゥー教や仏教の融合によってできた独自のクメール信念はとてもユニークなものであり、それらは言語、古典舞踊、音楽、芸術、建築など様々な文化に現れている。
これらは碑文であったり、ヤシの葉に記録されていたが、多くのものは原始共産主義のポル・ポト時代に消失。一切の伝統文化が否定され、でほとんどの伝承者が命を落としてしまった。結果文化的に大打撃をうけてしまう。平穏を取り戻した現在は難を逃れた人々が復興にあたり、海外からも支援などを受け、かつてのクメール文化がよみがえりつつある。


伝統舞踊

古典舞踊

古典舞踊は神に捧げる奉納舞踊としてアンコール王朝時代より継承されたもの。ヒンドゥー教、インド神話をルーツとしてさらに仏教、アニミズムなどが加わり、カンボジア独特の舞踊である。シアヌーク時代には王立舞踊団が組織され、国賓のもてなしでも演じられた。

アプサラダンス
人々の幸福を祈願し踊る天女の舞。きらびやかな衣装を身にまとい、そのダンスはしなやかで女性的な動きが多い。指や足の動きなどの細やかな型(動き)はそれぞれ意味を持ち、熟練のダンサーになればなるほど美しく魅惑的である。アプサラとは本来「水の精」を意味するがカンボジアでは「天女」に近い存在として捉えられる。神への祈りを捧げる者として、神と人間との仲介役だったと考えられている。

リアム・ケー物語
インド二大叙情詩「ラーマーヤナ」の物語を軸にカンボジアスタイルにアレンジされたもの。魔王に誘拐された妻を、王子がサルの援軍を味方につけて奪い返しにいくストーリー。アンコール遺跡にもよくモチーフとされる。

ソヴァン・マチャ
インド二大叙情詩「ラーマーヤナ」の物語を軸にカンボジアスタイルにアレンジされたもの。シータ姫を助けるため、猿将軍ハヌマーンはランカー島へと渡る海に飛び込みます。そこで黄金の人形姫ソヴァン・マチャに出会い、恋に落ち、求愛するというダンス。

民族舞踊

ココナッツダンス
ココナッツの殻を使いながら、男女で軽快なリズムを奏でて踊る民族舞踊。男女がペアになって踊る様は村の活気などを表すよう。代表的な舞踊で観光客向けの舞台ではよく見ることがある。

フィッシングダンス
カンボジアの「魚とり」をテーマに男女で踊るダンス。魚をとるための竹かごを使用しながら踊り、男女の恋の駆け引きなども見られる。ココナッツダンス同様、軽快なリズムと楽しいダンスで場が盛り上がる。

ピーコックダンス
孔雀のダンス。オス役、メス役が一人ずつ登場する。背面に広がる扇状の衣装は孔雀の尾を表現し、まるで本物の孔雀がダンスをしているように見える。孔雀は幸福、平穏のシンボルであり、人々の幸せや豊作を願うものである。

影絵芝居(スパエク・コー)

牛の革に神話に登場する神々や、人や動物、自然を掘り、スクリーンに投影して影絵を行う芝居。古典音楽とともに演じられるテーマは「ラーマーヤナ」などを題材にしたものが多く、台本は特にない。大方のストーリーが決まっているため、演じ手によってその場のアドリブなどが入る。

スバエク・トム
1mに及ぶ大型人形を使用して演じられる。王室や高僧などのセレモニーや厄払いで演じるられることが多い

スバエク・トーイ
コメディを加えた庶民的でなじみ深い芝居。コメディなども多く、言語がクメール語だが会場によっては観光客向けに字幕付きの場合もある。

カンボジアの王宮古典舞踊、スパエクについてはユネスコの無形文化遺産リストに登録されている。

 


音楽

カンボジアの伝統音楽は古代ヒンドゥー教より影響を受けている。クメール王国、インド、中国とその地域に住む原住民の音楽に由来し、多くのものが物語や宗教的な内容を含む。古典的な楽器は現在もアプサラダンスやパゴダ、その他観光地で聞くことができる。チン(シンバル)、ロネアット(竹の木琴)、パイオウ(フルート)、スライ(オーボエ)、チャペイ(バス・バンジョー)、ゴング(ブロンズ・ゴング)、トロイ(フィドル) その他様々な種類のドラムがあり演奏される。

60~70年代にはシン・シサモット(Sinn Sisamouth)とロ・セレイソティア(Serey Sothea)の「ビッグ2」のデュエットが大ヒットする。カンボジアの音楽は大きく変化を遂げ、ポピュラーな西側のロックをクメール語の歌詞で歌うなど、当時のシーンを盛り上げていた。しかし、クメール・ルージュのため、この二人の行方も最期も不明のままだ。結果多くの音源は戦乱により消失してしまい、現在は海外などに残されたテープを元に復元されたものが広まっている。

クメール・ルージュ以後は急速に西洋化が伴い、世界中の音楽の要素を多く取り入れていた。その音楽はポップからロック、メタル、EDM、ヒップホップなど幅広い。とくにテクノポップのようなテンポのよいものが好まれる。

その他、冠婚葬祭の音楽なども幅広く、カンボジア人の音楽好きがうかがえる。


スポーツ

現在、カンボジアではサッカー、バレーボール、バレーボールに似たセパタクロー、バスケットボールその他カンボジア武術ボッカタオなどが好んで行われる。

ボッカタオについては歴史が古く、アンコールワット建造のころから伝わる武術とされ、バイヨンなどのレリーフにも描かれている。
素手に加え、剣術、槍術、棒術といった総合武術であり、体術には341の技が存在する。自然の動きが多く、龍や鶴、鷲といった動物の動きが多い。ムエタイなどと同様に競技前には儀式を行う。

 

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