アンコールワットは12世紀前半、時の王スーリヤヴァルマン2世によって30年以上をかけて建立されたヒンドゥー教寺院である。
周囲は東西1.5km、南北1.3km、幅190メートルの環濠に囲まれ、「死」を意味する西側を正門として建てられており、このことから王の霊廟として建立されたという説もある。
内戦が収束しつつある1992年にユネスコ世界遺産にアンコール遺跡群として登録、カンボジア国旗にも描かれ、カンボジアの象徴であり、カンボジア人の誇りとも言えるだろう。
その主要部分である中央伽藍は三つの回廊と五つの祠堂からなる。
<第一回廊>
第一回廊の壁面には「マハーバーラタ物語」「王の行軍」「天国と地獄」「乳海撹拌」「ラーマーヤナ物語」など8つの物語の彫刻が施されている。
*天国と地獄
その構図は三段に分かれて構成され、上段は天国、中段は閻魔大王とその裁きを待つ人々、下段は地獄として描かれている。上段天国に絵が描かれる人々が穏やかな様子であるのと対照的に、下段地獄では現世で罪を犯した罪人が串刺しや釜茹でにされている様子が痛々しくが描かれている。
*乳海撹拌
ヒンドゥー教の天地創造神話の一部。インドラ神にかけられた呪いを解く不老不死の薬「アムリタ」を作り出すために神々と阿修羅が協力し、海を撹拌している様子が描かれる。中央にマンダラ山を背に載せた巨大な亀、その上にヴィシュヌ神が描かれる。向かって右側に神々が、向かって左側に「アムリタ」を半分もらうことを条件に協力をする阿修羅が描かれ、双方がマンダラ山に絡ませた大蛇を引き合い、海を撹拌している。
<第二回廊>
内側にはほとんど彫刻は無いが、外側(第三回廊側)には女神テバダーの美しい彫刻が多数施されている。
<十字回廊>
千体仏の間があり、多くの仏像が置かれている。その一角の柱には江戸時代にアンコールワットを「祇園精舎」として訪れた日本人、森本右近太夫の墨書が残されている。
<第三回廊>
急こう配の階段を上り、たどり着くことができる最も神聖な場。その四隅と中央にある尖塔は須弥山を模しているとされている。第三回廊の窓からは第二回廊や周囲の森林などの風景が一望できる。
※第三回廊への入場は一部制限あり。仏日は入場不可。