アプサラダンスといえば、カンボジア伝統舞踊である。
アンコールワット遺跡群にも多くモチーフとして用いられ、古代クメール王朝時代の美意識を感じることができる。一度はクメールルージュや内戦によって途絶えかけたカンボジア文化の一つである。
古典のアプサラダンスであれば、市内に数多くのレストランなどがショー形式で開催しているため、観光客でも目にする機会は少なくないだろう。

今回知ってほしいアーティストはNEW CAMBODIAN ARTIST(以下NCA)。
アプサラとコンテンポラリーダンスを組み合わせたものである。

2012年オランダ人のディレクターを中心に始まったプロジェクトがこうして今、かたちとなった。「古典のアプサラ」からは一線を画し、現代に新たに咲いたダンスはまるで現代のカンボジア社会を表しているようでもある。

古典の美しさに加え、力強さ、しなやかさ、表情までの細かな再現は今まで見ることの出来なかったアプサラの一面を新たに描き直している。

伝統的なものを現代的に表す時に、どうしても立ちはだかる壁は「古典への執着」である。古典を生かすべきか、崩してしまうのか、それを新しい表現とすることを良しとするのは難しい判断である。

現代人は過去の時代が作り上げてきたものへの理解を完全にすることは出来ない。そのため、多様化する現代の表現とリミックスをすることで新たなものへと昇華することも少なくはない。そこにわだかまる違和感が否めないことも少なくはないはずだ。

NCAのダンスは古典と現代が見事に融合している。
アプサラダンスの優美さ。これを一切壊してはいない。

慣れないコンテンポラリーダンスへの理解はなかなか難しいものであるが、ミニマル(短い音源を繰り返しパターン化することでなりたつ音楽のジャンルの一つ)を取り入れ繰り返されるダンスと空間の変化、シンプルからの複雑さなどそこに表されるストーリーへの表現度の高さには驚くものがある。

正直ステージ自体はまだお粗末で質素なものだ。
しかし、豪華なステージやきらびやかな衣装は必要ない。
4人のダンサーの表現力の前にはそんなもの必要ないのだ。

ダンサーたちは、見る人たちへ問いかけている。
カンボジアという環境や文化、そして歴史に対してどう捉えるべきか執拗に問いかけてくる。これはカンボジアだけにおさまるものではないのかもしれない。

単に表現力の高さだけを評価しているのではない。
カンボジアだからこのレベルで十分という表現を是非とも改め直してほしい。もうそんな時代ではないのだ。カンボジアはとっくに次のステップに歩みを進めている。

彼女らはダンサーとして、新しく咲いた芸術の一つだ。
これは彼女らにしか出来ないダンスなのだから。
今後の彼女たちの活躍に大いに期待したい。

NEW CAMBODIAN ARTIST
https://newcambodianartistsorg.wordpress.com/
FB:New Cambodian Artists
毎週土曜18時より受付、18:30より上演 15ドル(2018年1月現在)

問い合わせ
newcambodianartists@gmail.com
+855(0)11 664 834
Men’s Road Siem Reap, Siemreab-Otdar Meanchey, Cambodia

◆NCA(NEW CAMBODIAN ARTIST)と創立目的について
”ダンス”を通して、女性への教育と雇用機会を提供するソーシャルエンタープライズ(社会的企業)であり、女性たちがプロのダンサーとして自立し生きていけるよう、パフォーマンス公演の実施を通して適切な賃金を払うと共に、英語やチームワークなどの基礎教育も提供しています。また同時に伝統とコンテンポラリーなダンスの融合を通してカンボジア文化を再創造し、その価値を国内だけでなく、世界に発信するということを目指しています。創立者は、オランダ人のボブ・ルイゼンダール(オランダを中心にヨーロッパで舞台芸術のアートディレクターとして活躍。)

◆ダンサー
現在は4人の女性のダンサーで講演。年齢は、10代から20代までで、創立者のボブが貧しい農村でオーディションを行い、ダンスの素質のある女の子をダンサーとして雇用。