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カンボジアに

カンボジアを初めて訪れたのは1998年。日本国政府アンコール遺跡救済チームの代表を務める中川武教授の研究室に所属となったのがきっかけであった。当時修復工事前の準備調査が進められていたアンコール・トム内にあるプラサート・スープラ遺跡にて、現状図面を作成する仕事の手伝いとして訪れた。初めてのアンコール遺跡は、アンコール・ワットやバイヨンなどの壮大な遺跡の前を通り過ぎて作業現場へと通う日々で、足場の上から王宮前広場を振り返って眺めるのが幸せな一時であった。帰国直前に時間をもらって、やっとアンコール・ワットを見た、そんな思い出がある。

その後、修士課程の時代には、修復事業チームが行っていたプノンペン王立芸術大学の学生研修事業のティーチングアシスタントとして、年数回アンコール遺跡を訪れた。さらに博士課程に進学してからは、アンコール・ワットの修復工事の計画立案に携わるようになり、より長い期間遺跡に身を置くようになった。

 

バイヨン寺院の修復駐在員時代
サンボー・プレイ・クック遺跡群の保存と研究

(こちらの記事は書籍版でご紹介しております)

 

現在、そして今後の自分の挑戦

現在は、大学教員となり教育と研究の二つの仕事が目前にあります。今はこれまで実学として遺跡で学んできたことを整理するためのとても貴重な時間だと感じます。

遺産の保護について体系的に学んだことがない自分が、いかにして文化遺産の保存修復を学生に伝えていくのか、難しさを感じることは少なくありません。ただ、アンコール遺跡で実に多くの先生方、専門家の方と仕事をさせていただいたことが大切な財産になっていると思います。多様な専門的視点から、絶対的な正解のない遺産保護について考えるトレーニングをしてきました。また、現場で多くの人と仕事を進める事業運営や、様々な関係機関との調整等、アカデミックな世界では学び難い経験ができたことも今となってはこの分野における自分のユニークネスの一つだと思います。

今後、どのような課題が待ち受けているのか分かりませんが、一つ一つのチャレンジが次の新しい世界を開いてくれることになると期待しています。

アンコール遺跡は、生涯にわたって追い求めるべき広大な未知なる世界を提供し続けてくれることでしょう。

 


 

下田 一太(しもだ いちた)

出身: 東京都

学歴: 早稲田大学理工学部建築学科卒業

職業・業種: 筑波大学芸術系世界遺産専攻助教

趣味: 遺跡の研究

カンボジア歴: 1998年初訪問、2006年より滞在、現在は日本在住

ウェブサイト: http://nc.heritage.tsukuba.ac.jp/stafflist/shimoda/

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