大回りコースはアンコールトム北門から出て、アンコールトム北東から東側へと拡がる遺跡群を廻る観光道を指す。
名前からもわかる通り、小回りコースよりも長距離ルートとなっている。
【プリア・カン】
アンコール・トム北門から出て、大回りコース最初に目にする遺跡がプリア・カンである。
この地にはもともとかつての王の王宮があったが、チャンパ王国により長年支配されていた。そのチャンパ王国の王をジャヤバルマン7世がこの地で討ち、自らの父を模した観世音菩薩像を1191年に安置、寺院を建立した。
もとは仏教寺院であったが、のちの王ジャヤバルマン8世がヒンドゥー教を信仰していたため、仏像は破壊され、ヒンドゥー教のと仏教の要素が混じる複合寺院として残されている。
「プリア・カン」は「聖なる剣」を意味し、かつて境内で発見された剣に由来する。尚、当時発見された剣はプノンペン国立博物館にて保管されている。
アンコール遺跡群の中では珍しい円柱造りの二階建ての経蔵が中庭に位置するのが特徴のひとつである。
【ニャック・ポアン】
プリア・カンの東側に位置し、12世紀にジャヤバルマン7世によって築かれた沐浴場。中央に大きな池があり、その周りを東西南北に小さな4つの池が取り囲んでいる。大池の中央には円形の祠堂があり、基壇に蛇神ナーガが巻き付いていることから「ニャック・ポアン(絡み合う蛇)」という名がついた。
さらに、中央池の中心には観音菩薩が馬に姿を変えた神馬「バラーハ」の像があり、4つの小池にはそれぞれ人・馬・獅子・象の像があり、その口から聖水が流れ出す仕組みとなっている。当時はこの四方の池で沐浴をすることで病気が治ると信じられていた。
【プレ・ループ】
アンコール・トム東側に位置し、961年に建立されたヒンドゥー教寺院。
境内には石棺があり、かつてはここで死者を荼毘に付していたことから「火葬」の意味をもつ「プレ・ループ」と名付けられた。
三層構造のピラミッド型寺院であり、最上層からはアンコールワットと夕日を一度に遠望できることから人気の夕景鑑賞スポットでもある。