カンボジアのアンコール遺跡群は、映画『トゥームレイダー』のロケ地としても知られています。ここでは、『トゥームレイダー』で使われた場面と、現在のその場所とを比較してみます。
まず、『トゥームレイダー』のあらすじについて説明します。この映画は、2001年にアメリカや日本で公開されたアクション・アドベンチャー映画で、アンジェリーナ・ジョリーやジョン・ヴォイドなどのハリウッドスターが出演しています。
主 人公のララ(アンジェリーナ・ジョリー)は、幼いころに父(ジョン・ヴォイド)を亡くし、現在はトレジャーハンターとして活動しています。ある日彼女は父 の部屋で時計を見つけるのですが、それは5000年に一度、時を支配する力を持つ古代秘宝「光のトライアングル」への鍵であることがわかりました。そのカ ギを秘密結社・イルミナリティに奪われてしまったララは、「光のトライアングル」の半分が隠されているカンボジアのアンコール・ワットへ向かいます。
こちらは、アンコール・ワットに到着し「光のトライアングル」に関する手がかりを探すララが、不意に現れた謎の少女を追いかける場面です。
この場所は「タ・プローム」という遺跡で、ガジュマルやスポンの木が遺跡を侵食している様子で有名です。写真でも、白い木の幹が遺跡の壁に沿って伸び、遺跡を押し潰して地面には破片が散らばっているのが見えます。
現在の写真でも、映画を撮影した当時と同じように、遺跡に沿って伸びる木の幹はそのまま残っています。しかし幹の表面をよく見ると、ロケの時より幹の表面に苔が目立つのがわかります。また、地面に落ちていた瓦礫はおおよそ片付けられ、観光客向けに足場が作られています。
アンコール・ワット内にはこのような足場や順路を示す標識が最近設置され、観光客への配慮が進んでいます。
こちらは、
この場所も写真スポットとして非常に有名で、
この根は、
ララを演じたアンジェリーナ・ジョリーも、
次に、
ガイドブックでもしばしば紹介されている「
映画が撮影された15年前と比較してみると、
タ・プロームを侵食している木の根は、
アンコール・トムの南大門も、プノン・バケンの丘からララが敵を
南大門では、神々や悪魔が大蛇を引っ張り、海をかき回して天地を
映画の中でも、南大門はカンボジアの人々が綱を引っ張り、仏像で
そのため、映画を観てから南大門に行くと、なお観光を楽しむこと
最後は、ララが「光のトライアングル」の片方を手に入れ、カンボジアを後にするシーンです。
アンコール・ワットの前の池は、船が漕げるほど水が溜まっています。作中でララはこの池で船をこいだり、お坊さんと会話したりしていました。(水面の船は映画のためだけのセットなので、実際には見られません)
一方2016年12月の写真では水が少なく、船が漕げるほどの水深はなさそうです。映画とは全く異なることが一目でわかります。実はカンボジアには雨季(5月下旬~10月下旬)と乾季(11月上旬~5月中旬)があり、映画は雨季の様子、もう一方は乾季の様子です。雨の降らない乾季には、池の水がここまで減ってしまいます。
季節によってもアンコール・ワットは違った顔をのぞかせるのです。
以上のようにアンコール・ワットは、『トゥームレイダー』撮影時そのままのところもあれば、時代や時期によって大きく変わった部分もありました。
また今回取り上げたのは5シーンだけでしたが、取り上げきれなかった部分もたくさんありました。なので、アンコール・ワットに行く前は『トゥームレイダー』を見て、ほかのシーンの場所を見つけてみたり、映画のシーンと見比べてみるとさらに楽しめるかもしれません。
おまけ
シェムリアップのレストラン街パブストリートには、アンジェリーナ・ジョリーが通ったといわれるレッドピアノというレストランがあります。そこではトゥームレイダーカクテルなるものが飲めるので、ぜひ一度試してみてください!
2016年12月30日
上平桃花/豊原拓真