【住めばカンボジア】三輪 悟さん(後編)

住めばカンボジア

 


自然と対峙しない思想・ある程度流れに身を任せる考え方が「面白い」と思えるのです。

【上智大学アジア人材養成研究センター/特任助教・アンコール・ワット修復工事所長】

カンボジアでの生活はどうですか?
カンボジアに関わり、初めてアンコールワットを見てから、早いもので四半世紀が経ちます。学ぶことが多いと感じますし、今も毎日が刺激的です。
なんと言えばいいのでしょうか、やはり私の精神の原型は幼少期を過ごした東京で形成されたと思いますので、カンボジア、特にシェムリアップの農村風景と農村の思考形態は興味深く感じられます。自然と対峙しない思想、ある程度流れに身を任せる考え方が「面白い」と思えるのです。
風と水が竹の床を抜ける高床式住居を見たときに、近代建築を支えた「鉄とガラスとコンクリート」だけが正解じゃないんだとの思いが強く湧いてきました。これからも、カンボジアから多くを学びたいと考えています。

カンボジアでよく見る風景。牛は田んぼや畑を耕すときに重宝します。(2021.08.09)

アンコールワットが舞台・劇場として使われることもあります。こちらは踊りのイベントの様子。(2013.12.05/アンコールワット第三回廊の下)

お盆前の二週間、各寺では行事が行われます。「祈り」の意義深さをカンボジア生活で学んでいます。
(5:20AM, 2019.09.23/アンコールワット北寺)

同じくカンボジアのお盆の様子。大勢の人が祈りを捧げます。(2016.09.22/アンコールワット北寺)

春分の日と秋分の日には、アンコールワット中央塔から朝日が昇ります。(2021.03.22)

2018.03.22

春分の時期(2018.3.20)

コロナ前とコロナ禍で違うことはどういうところですか?
第一に「日本との往来が自由にできない」ことが挙げられます。これまで私自身は年に2~3回日本と往来する生活を続けていましたが今はできていません。また東京の専門家が現地を訪れることも困難です。大学関係者の往来は昨年3月以来完全に停止したままです。事務的には手続きを踏めば可能ですが、時間とお金がかかりすぎるため現実的には費用対効果の点で控えています。
第二に「マスク着用の生活が定着した」ことが挙げられます。これまでの人生の中でマスクを着用したことはほとんどありませんでした。今では下着をつけるのと同じように、マスクをすることが当たり前なことになりつつあります。

観光客が年々増加し、ピークの2018年には260万人の方が遺跡チケットを購入しました。(2018.02.05)

アンコールワットでの初日の出を拝む大勢の観光客(2019.01.01)

コロナにより人が消えたアンコールワット(2021.08.27)

コロナ禍で気を付けていることは?
やはり「感染しない、させない」ことが大切だと思いますので、新型コロナ感染予防を心がけています。上智大学アジア人材養成研究センター(シェムリアップ本部)では、上智大学(東京)とも相談の上で、7月から10月まで事務所の一時閉鎖をしていました。職員の安全と健康を最優先するためであります。

コロナ禍の今どのような生活をしていますか?
カンボジアにおけるコロナは、2020年の一年間は他国の状況に比べ感染者の数が非常に少なく、誤解を恐れずに表現すると「コロナ前段階」と言えました。
2021年に入った2月20日、国内で唯一他国との玄関口になっていたプノンペンで、陽性者の隔離を徹底できず、国内各地に感染が広がり今に至ります。人流を抑制することが結果的に感染拡大防止につながりますので、オンラインでできることはオンライン化し、外出を以前より減らすように留意しています。

今後の展開はなんですか?
遺跡保全に関わる人材はこれまでの関係各国の約30年に及ぶ国際協力の成果もあり確実に増えてきました。
国内各地でカンボジア人専門家が頑張る姿を見ることができます。
今後は、その質をさらに向上させることだと思っています。
さらには、タイのバンコクやベトナムのホーチミンが経済発展を遂げたのとは一線を画し、カンボジアではシェムリアップの街が文化の中心地として発展していけるような道を考えていければと思います。地域の風土や人の特徴を生かす将来を模索することで魅力ある町づくりができるのではないかと思っています。


旅人に向けてメッセージをお願いします。
若い方には、とにかく一度カンボジアを訪れアンコール遺跡群を見てほしいと思います。その際、予備知識は必ずしもなくても構いません。先入観にとらわれず五感でカンボジアの文化を体験することをお勧めします。できれば2~3度訪れてほしいと思います。一度目の見え方、二度目の見え方、三度目の見え方、すべて異なると思います。その差異は自分の中の受け止めるセンスに変化が生まれてきたことによります。アンコールは逃げません。
バーチャル体験も可能な時代ではありますが、とはいえ自分で足を運ぶことで初めて見えてくることがあります。

久々のガイド仕事が嬉しかったのか、飛び跳ねて僧侶を案内するガイドさん(2021.04.30)

≪ 写真提供:三輪悟先生 ≫

『コロナが終息しますように』 (2021.08.20)
カンボジア全国のお寺では、朝5時・昼11時、午後2 時・夕方5時・夜8時、1日5回、コロナの感染対策と警戒心を忘れないため鐘を鳴らし太鼓をうちます。※コロナの感染が拡大した今年の3月末より。
※こちらの動画はさらに警戒意識を高めるため、夕方6時に追加で鐘を鳴らす指示が出た特別な日です。
≪ 映像提供:三輪悟先生 ≫

アンコール見聞録
カンボジアフリーペーパー『NyoNyum/ニョニョム』にて、三輪先生が執筆・連載されています。
カンボジアについて様々な角度から書かれた記事を読むことができます。

Name 三輪 悟
Satoru Miwa
Born 東京都江戸川区
Age 47
Birthday 1974年
Work 上智大学アジア人材養成
研究センター(本部)
アンコールワット西参道
Hobby 旅行、サイクリング、
建築見学、天体観測
Spots 小中学校時代は剣道
大学時代はカヌー、
インラインスケートなど
座右の銘 好奇心から始めよう
MAIL satoru@online.com.kh
FB アジア人材養成研究センター
WEB 上智大学アジア人材養成研究センター

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↓より詳しく知りたい方へのご案内↓


 

 

 

 

プロフェクトX
アンコールワットに誓う師弟の絆
2001年11月20日放送
石澤良昭教授、片桐正夫教授、
石職人・小杉孝行さんが登場。
現在の活動の原点を知れます。
DVD
電子書籍

『カンボジア 密林の五大遺跡』
石澤良昭教授と三輪悟先生の共著

 

 

 

 

 

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